お盆の時期に日本各地で見られる伝統的な習慣の中でも、東日本で特に有名なのが、茄子とキュウリを使って作る精霊馬(しょうりょううま)の飾りつけです。
この風習は東日本に特有らしく、西日本ではあまり馴染みがないかもしれません。
実際に、西日本に住む人たちの中には、精霊馬の存在を知らない人や、見たことはあっても詳しいことを知らない人が多いのが現状です。
そこで、この記事では精霊馬に関する地域別の風習や、その意義、そして作り方についてご紹介します。
東日本のお盆の風習:茄子とキュウリで作る精霊馬
東日本、特に関東地方では、お盆の迎えの日(8月13日)に精霊馬を作り、お盆の最終日(8月15日から16日)まで家の精霊棚や玄関などに飾ります。
一方、関東以外の地域、例えば北海道から中部地方では、お盆の最終日に精霊馬を作ることが多く、お供え物を下げる際に一緒に処分するのが一般的です。
このように、東日本ではお盆の期間全体にわたって飾るのに対し、北海道から中部地方では最終日だけ飾るという違いがあります。
西日本のお盆の伝統:精霊船の飾りつけ
一方、西日本では精霊馬ではなく、精霊船(しょうりょうぶね・しょうろぶね)を飾ることが一般的だと言われています。
私も広島や岡山に住んでいたことがあるのですが、お盆の行事に参加したことがなかったので、地域でこのような違いがあるとは知りませんでした。
お盆の時期は同じでも、住む地域によって習慣が異なるのが興味深いところです。
新しい土地への引っ越しや結婚などで家庭を持つ際には、その地域固有の風習に驚くこともあるでしょう。
しかし、どの地域にも共通するのは、先祖を敬うという心です。
そのため、住んでいる地域の習慣に合わせて、お盆を迎えるとよいでしょう。
お盆の伝統:東日本での精霊馬、その意味と作り方
東日本の一部では、お盆期間に茄子とキュウリを使い精霊馬を作る習わしがあります。
これらの精霊馬は、先祖の魂を迎え、また送る象徴として重要な役割を担っています。
キュウリを用いて作る馬は、迎えのシンボルとして、先祖の魂がすばやく戻ってくることを願って、足の速い馬に見立てられています。
反対に、茄子で作る牛は、送りの象徴で、先祖の魂がゆっくりと旅立つことを意味し、足の遅い牛として表現されます。
また、牛を選ぶ理由としては、多くのお土産を積むことができるという考えもあります。
茄子の方は「精霊牛(しょうりょううし)」と呼ばれることがあり、キュウリで作る精霊馬を合わせて「牛馬」と呼ぶことも。
地域によっては、お盆の初めにキュウリの馬を、終わりに茄子の牛を作るなど、迎えと送りの役割を分けていることがあります。
北海道から中部地方のように、お盆の最終日に精霊馬を作る習慣は、送りの役割に特化しているためです。
なぜキュウリと茄子を選ぶのか
では、なぜ精霊馬の作成にキュウリと茄子が選ばれるのでしょうか?
この疑問に対する明確な答えはまだありませんが、夏に旬を迎えるこれらの野菜は、昔から手に入れやすかったことが一つの理由と考えられています。
夏に育つ新鮮なキュウリや茄子の使用は、先祖への敬意の表れである可能性があります。
旬の果物を供えることが望ましいとされる中、旬の野菜を用いることは、お盆に先祖を迎える際に自然で適切な方法と言えるでしょう。
藁で作る伝統的な精霊馬
お盆の時期にキュウリや茄子を使った精霊馬を作るのが一般的ですが、藁を用いて作る地域も存在します。
イネ科の植物の藁で作られた本格的な馬のたてがみを備えた精霊馬は、製作に高度な技術を要します。
そのため、多くの場合は職人の手によって作られます。
しかし今回は、身近で簡単に作ることができるキュウリと茄子を使った精霊馬についてご紹介します。
キュウリと茄子を使った簡単な精霊馬の作り方
必要な材料
- 曲がりがあるキュウリ(できれば曲がり具合が顕著なもの)
- 太く曲がった茄子
- 割りばしや竹串
キュウリや茄子が曲がっていると、馬や牛の形状をよりリアルに表現できます。
これらの曲がった野菜は、一般のスーパーよりも直売所や道の駅で見つけやすいかもしれません。
作り方
- キュウリと茄子に割りばしや竹串を4本刺して、立てられるようにします
これだけで、精霊馬の完成です!
キュウリと茄子の形を生かしながら、馬や牛の姿を想像して作りましょう。
子どもでも簡単に作れるため、夏休みの工作にもぴったりです。
まとめ
西日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、東日本ではお盆に先祖の魂を迎えるための馬としてキュウリを、帰りはのんびりと景色を楽しむ牛として茄子を用いて作ります。
作り方はとてもシンプルで、キュウリと茄子に割りばしや竹串を4本刺して立てるだけです。
野菜の自然な曲がりを活かして馬や牛の形を表現することがポイントです。
今年のお盆には、ご自宅で精霊馬を作ってみてはいかがでしょうか。